12月号 ♣ ドングリは、「実」それとも「種」?♣

2017年11月22日

理事長コラム

 ドングリは、「実」それとも「種」

 描画を通しての子どもとの対話

大人にとっては、なにかとせわしい師走を迎えますが、子どもにとって12月は、流れ星のように夢がたくさん降ってくるファンタジックな季節です。
子どもが絵を描く時の教師の導入や言葉がけで、描く絵が輝きます。
例えば、4歳児がウサギの絵を描く時は、ウサギを抱いたり、触ったり、ウサギの感触を身体に刷り込んでいます。心のキャンパスにウサギのイメージがデッサンされるとウサギを見ないで一気に描きます。この描くまでの導入過程が大切です。
描画活動においても、子どもが成長していく道筋があります。

2歳8か月頃までは、描線よりも言葉が先行します。
3歳のお誕生頃から子どもの描く描線に形が出てお話の世界が広がります。
人との関わりが見えてくる5歳の誕生の頃、子どもが描く絵に、自分が描かれ
虫、動物、ママそしてパパが描かれてきます。この年齢の描画の過程は、
描線、形、色、構図等の表現技法に世界中、共通点が見られます。
2歳の前後に見られる線のつながり方やその形。3歳の子どもが描く
○や渦巻きの描き方。○を描くとき、始点からの描線が結べない終点。
丸い顔から直接つながる手、顎から描かれる案山子のような頭足人間描法。
古代エジプト文化等の壁画に共通する子どもの描法が乳幼児期に見られます。

    描画表現は、文字による表現力を持たない幼児にとっては、大切な「心の表現」手段です。それだけに、子どもが描く一本の描線が、子どもの心の中に膨らんでいる気持ち「思い」の表現であり表出です。
年長松組の子どもたちとの対話、「ドングリングリは実なのかな、種なのかな?」と私がつぶやくと、実だと思う子が多い中で、「たね。」と答えたT君の自信の一言。
「ドングリの木がドングリを落とすと、リスがたべる。そして、リスは冬のために、あちこちに穴を掘ってドングリ(種)を埋めておくんだんだよ。何のため?」
S君「リスって 頭がいいね。」「ちがうよ、リスは、うめた場所わすれちゃんだ。」
さすが図鑑博士M君は、昆虫や生物に詳しい。
「そうだね。リスがわすれてくれたおかげで、ドングリは、春になって、芽を出して木になれるんだ。」この話を脳にイメージできてる子は、絵が広がる。
年中竹組さんが柿の木を描くことになった。「幼稚園の柿を食べたことがある人?」「ザクロを食べたことがある人?」、誰もいない。
「ザクロって 食べられるの?」の女の子からの質問。「スーパーで売ってないから食べられない。」という結論になった。
私は、「おいしいよ。ざくろは、・・・」と答えながら 真っ赤なざくろを5粒ほど、口にっほうばった。独特の酸味にむせながら、手のひらに種をペッと吐き出す。「リジチョウ先生 だいじょうぶ?」数人の女の子が心配そうに背中をたたいてくれる。T君「ざくろは、どくがあるかも・・」の一言で、みんなが心配してくれる。
「幼稚園の柿の実は、誰もとらないのに、いつのまにかなくなっているね。だれがたべるんだろう?」「きっと からすだよ。」
「ちがうよ。チッチとなくしっぽのながい鳥だよ。」「すずめが、いっぱいとまっていたのをみたことあるよ。」話し合って鳥が食べていることになった。
「鳥が,柿を食べて一番喜ぶのはだれだろう?」
「えんちょうせんせいかな?」「どうして園長先生なの?」「わからない。」
「ちがうよ。鳥だよ。」「一番喜ぶのは柿の木だとおもうよ。」の私の答えに、
子どもたちは、「どうして?」{どうして?」と身を乗り出してくる。
「柿の木は、鳥たちに実を食べてもらって、あちこちに種をまいてもらうんだよ。」
「わかった。鳥に種をうめてもらうんだよね。」との答えに「うめる?どうやってうめてもらうのかな?」子どもたちの話が広がる。
「鳥がうめるんでなく、柿の種が、鳥のうんちにまじって土にまかれるんだとおもうよ。」との私の説明に、「へぇやっぱりね。うんちなんだ。うんちだってよ。」男の子も女の子も「うんち」の話であちこちでエスカレートする。
「リジチョウ先生は、いろんなことをしってるね。」「ネットで調べたんでしょう。」図鑑博士のM君からお褒めの言葉。「先生が小さいとき、図鑑買ってもらえなかったし、ネットもなかったから、大きい人に質問して、勉強したんだ。」と答えた。
このような話の導入経過があって、松組の先生たちが、タイミングよく、画板、画用紙とパステルを用意してくれた。
子どもたちは、それぞれ柿の木の周りで自分の位置を決めて、描き始めた。
子どもたちが描いた柿の木は、熟した柿が描かれ、その柿を食べる小鳥たちが群がる楽しい世界が色鮮やかに描かれていました。
竹組さんも大きな画用紙にクレパスで柿の木を描きました。竹組さんの男の子、柿の絵を描いている私の隣に座り込んで「せんせいじょうずだね。この絵うれるよ。ババがかってくれるかもよ。」とささやいてくれた。最高のほめ言葉におもわず
「ありがとう」素直に返事してその気にさせられました。

年少花組さんは、正直です。幼稚園バスを描いたときに、私は、説明しながら、利き手と反対の手で無造作に園バスを描いていました。
子どもたちから「へたぁ」「ヘンなバス」と一斉にブーイングを浴びせられました。翌日になっても、「リジチョウせんせいの バス下手だね。」と言われショックを受けています。画用紙に描かれた子どもの心の表現を聴診器をあてるように耳を傾けてください。

きっと子どもの宇宙へのつぶやきが聞こえてくることでしょうね。