11月号 ♣ のびろ のびろ 子どもたち♣

2015年11月10日

理事長コラム

                      のびろ のびろ 子どもたち

季節に色を添えれば、秋は、さわやかな空色であり、渓谷をいろどる黄色と紅色、                   朝夕に頬を染みる白い風・・・。
木々の葉が、折り鶴のようにカラカラと風に舞う。柿は、たわわと実を抱え、鳥の群れの訪れを迎える。
子どもの育ちが、目に見えるのも秋。
秋になると、子どもの心も、ゴム風船のように色づいて内側から膨らむ。
物事とじっくり取り組めるのも秋、しっかりと自分の位置を確かめるのも秋。
そして、秋を迎える子どもの心の中には、自分以外の友だちや生き物などを受け入れる引き出しがたくさん育つ。
3歳児には、3歳児の世界、4歳児には4歳児の育ちの中で、心が広がっていく。
年長5歳児は、さらに、背丈も伸び、心に知恵もつく。
そして、心の部屋が広がり、お話の世界が大きく育っていく。
ちょっぴり子どもが背伸びして、大人の真似をして、振る舞ってみたくなるのも秋。
子どもの素顔が輝く秋、その一端をご紹介します。

                         年長ミドリの館のテラス「女の子の口げんか」

Rちゃんが悲しい顔をして立っています。「どうしたの?」
「あのねぇー、役をきめようとしたらTちゃんが わたしは6歳だから、わたしがきめるって いばるんだよ。わたしも早く6歳になりたいの。」                                              子どもにとって、お誕生日を迎えることは、1歳、高いステップを踏むことになります。
私の子どものころは、お正月で国民全員が年齢が、1歳、増えたんですがね。
学生から、それこそ「うそでしょー」と一笑にふされます。
ふらりと訪れた年長の保育室の前のテラス。女の子5人ぐらいで運動会以来の得意技、側転の競演。  狭いスペースを上手に交差します。
その見事さに、「これはボリショイサーカスなみだな」とつぶやくと、
「ボリショイ? なに それって?」と子どもたちは、興味津々。
「上手ってほめたんだよ。ボリショイ・サーカスは、ロシアのサーカスの名前で…    バレーリーナみたいに上手に曲芸をするんだ。」
「わたし バレーやってるんだ。」と白鳥のポーズ。
「わたし、うまいんだから・・みてぇー」とKちゃんが、横から私の前に出た。
「ずれこみ (ずるこみ?) だめだよっ!」LちゃんがKちゃんの袖をひいた。
k「ちがうよ 前から並んでいたんだよっ!」
L「自分でうまいって言うのおかしいよ」
k「だってうまいんだもの」
O「Mちゃんはもっとうまいよ。」
K「くらべないでよっ!」言葉が、だんだんきつくなっていく、、、険悪ムード。
Lちゃんとkちゃんが向かい合った。その周りを4人ぐらいで囲んで無言。
そのうち Kちゃんは、しくしくなき、テラスの隅にしゃがんだ、他の4人はそれぞれ何事もなかった          ように側転ごっこ。   私は、動画の早送りをみるようなテンポに戸惑い、それとなく場を外してしまった。
それでも気になって戻ってみると、デッキのステージは、場面が変わっていて、大きな段ボールをつないで        トンネルを作っている。KちゃんもLちゃんも同じグループで嬉々としてあそんでいた。
「仲直りできたの?」と近くの男の子にたずねた。
「うん、ごめんねって、Lがいったら kもごめんね ていった。」
「それだけ?」、 Y君が、「おんなは いつも そうだよ」の一言。
子ども同士のいざこざは、どちらかが「ごめんなさい」と一言いうと、
「うん いいよ。」手をつないでスキップで解決することがけっこうある。
仲介に入って二人の言い分を深刻に受け止めていた教師が、逆にあっけにとられて「ねぇーあなたたち それでいいの?]

                                                やさしい心

ママから事務所に急きょ電話。「ママ急にごようができて、白ぐみさん(預かり保育)で待っていることになったの。」と伝言された年少のMちゃん。
「かえりたいっ!」と大泣き。幼稚園大好きでいつも帰りたくないとママを困らせるMちゃん。どうしたのでしょうか。      花組さんが集まってきた。「Mちゃんママ用事で白組さんになったの。」と説明すると、
子たちがMちゃんに「しろぐみはおやつもでるし 楽しいよ」
「おうちでいるよりもようちえんでいるほうが楽しいよ」Mちゃんをはげました。
「朝、 ママ あずかりって いわなかったの。」
この言葉に周りは 無言。しばらくして Eちゃん、「ママがわるいね。」

              子どもからのはげまし(実習日誌から)

責任実習の日、わたしは「はじめてのおつかい」の絵本をよむことにしました。
昨日、家族の前でなんかいも練習したのですが、実習中、緊張のあまり途中でせきがとまらなくなってしまいました。         「ごめんね。風邪をひいたかな?」
すると子どもは、「牛乳ください」という台詞のところになると全員で大きな声で  「牛乳をください」とよんでくれたのです。「せきがいっぱいでちゃってごめんね」とあやまると、「たのしかったからいいよ。はやく風邪なおしてね。」といってくれました。
「かぜひいたかな?」と うそを言ったのに・・・」子どもたちは風邪を心配してくれて・・・・  なみだがでるほどうれしかった。
子どもの世界って楽しいですね。
11月14日は 成田山公園での秋のファミリーデイです。きっと紅葉も見事でしょう。お楽しみください。

 

                                            わかっているウソ

数年前の学生の実習日誌から抜粋しました。

『年長の女の子が、トイレが間に合わずに、おもらしをしてしまいました。わたしは嫌そうな顔をしているその子を見てすぐとりかえなくちゃ、とおもい、その場でズボンをおろそうとしたところ、ズボンをひっぱって、「うしろ うしろ」とささやきます。 後ろを振り返ると男の子がいました。
わたしは、あわててその子を連れてトイレにいったのですが、男の子が言いつけたと見えて他の女の子も        二・三人トイレの中に入ってきて のぞこうとするのです。
わたしの配慮のなさと処置の悪さであの子にいやなおもいをさせてしまいました。
後かたづけをして教室に戻ってみると、いつもと変わらない雰囲気。                         お漏らしをした女の子にそっと「さっきはゴメンね」とあやまりにいきました。
すると「もう ちゃんとみんなに嘘をついたから大丈夫よ」とさっぱりしています。わたしはほっとしました。
ところが、さっきの子どもたちがわたしをみると「おもらし先生、おもらしせんせー」とわらうのです。         わたしはおもらし先生にされてしまいました。
でも、その後、女の子が「さっき ありがとう」という言葉でホッとしました。                    その場に居合わせた子どもたちも、二度とおもらし先生とは言わずにまえよりもっとなかよしになれました。私もホッとしましました』