♣8月号 理事長コラム「子どもの世界 桃太郎」

2023年08月07日

理事長コラム

子どもの世界「桃太郎」

地球温暖化が原因?船橋は海に近いのに海風が高く、高層ビルが建ち並ぶので、各家庭から排出されるガスが底流する。したがってむしむし暑いですね。いよいよ夏休み。私たち幼稚園スタッフにとっては、日常できない研修に時間がとれて各種の社会研修にも参加する良き機会です。また子どもたちにとっても、幼稚園は宿題もなし、それこそ、陽が登り、陽が沈むまであそびに明け暮れる夏休みが過ごせたら最高ですね。ともすると、気ぜわしく追われながら、時間だけが駆け足で去っていかないように有意義に過ごせたら幸せです。夏休みは、麦わら帽子、アイスキャンデイ屋の自転車の旗、入道雲、通り雨お祭り縁日、海水浴、キャンプ、捕虫網、・・・。

◆桃太郎は、日本のアイドル

『むかしむかし、あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。おじいさんは 山へ しばかりに、おばあさんは 川へせんたくに 行きました。おばあさんが 川でせんたくをしていると、山のほうから ドンブラコ、ドンブラコと、大きな桃が流れてきました。おばあさんは、大きな桃をひろって、帰りました。おじいさんとおばあさんが、桃を切ってみると、中から 元気の良い男の赤ちゃんが飛び出してきました。桃から生まれた男の子を、「桃太郎」と名付けました。

日本人なら誰でも知っている「桃太郎」のお話です。わたしは、母親に子守歌のかわりに、添い寝をしてもらいながら、母から、「ドンブラコ ドンブラコ」と、モモが流れてくるお話を聞いて、育ちました。昭和21年終戦の翌年、小学校に入学し、教室にあった「金太郎」と「桃太郎」と「一寸法師」は、軍服を着た兵隊さんでした。しかし、中学では、桃太郎の話は、「成人した桃太郎が、それぞれ才能を持って生まれた「サル」「きじ」「いぬ」の友だちと一緒に、豊かな大国である鬼の国に親善外交にでかけ、「知恵」と「技能」を発揮して働いた結果、沢山の宝物を持ち帰り、貧しかった村を豊かな村にすることができました」という民主主義の「桃太郎話」を聞きました。戦後の民主教育に沿って、「きびだんご」をもらって家来になる「主従の関係の否定」、略奪をして金持ちになる「鬼集団の否定」、「征伐、退治、略奪という反民主的な行為の否定」で、桃太郎伝説の童話本が修正されていました。桃太郎は、800年近くを維持した日本の人気キャラクターです。ドラえもんやマリオよりも「桃太郎」は日本を象徴される有名人です。古くは奈良時代から伝えられ、古事記にも登場するそうです。戦時中、芥川龍之介も「桃太郎」を描いています。桃太郎話は、その歴史も長く、700年以上も昔、室町時代から語り継がれたそうです。足利幕府ができた時代、鬼征伐は、武家統治社会にふさわしい話だったのでしょう。桃太郎のお話は、「竹取物語や」「浦島太郎」とやや異なり、結びがハッピーエンド、でおしまいで、ほっとさせてくれるからでしょう。

私の高校時代、英語の教師から「この桃太郎話は、700年前の戦国時代を含めて、戦争の大義名分に使われた侵略小説」と説明されました。第二次大戦の場合、アメリカを鬼畜米英の鬼に例えると、犬は戦車・猿はトマフォーク、キジはミサイルなのかもしれません。 面白いのは、明治24年に金色夜叉で有名な文豪尾崎紅葉が「鬼桃太郎」という桃太郎話のその後を綴った児童書を発行しています。「桃太郎軍団に破れた鬼王は、その屈辱と遺恨で日本征伐の勇者を募ります。しかし、桃太郎軍団の強さに怖じ気づいて、だれも志願しません。その中で、桃太郎の攻撃で片腕を失った一組の老夫婦が名乗り出ます。彼らは、桃太郎侵略の時、城門番だった鬼の夫婦です。負けた責任を受けて降格された鬼の老夫妻が、志願します。二人は、夜叉神社に桃太郎に勝る子を神から授かるように参拝します。37日目の夜、霊夢のお告げ通り、流れ着いた大きな桃を割ると、赤ちゃんが生まれ、身の丈、一丈五尺の青鬼に変身します。そして、二人は、桃太郎の二倍もある青鬼に育てます。この青鬼が、桃太郎退治に98万7654億3万2千百里の宇宙を渡って侵略してくるのです。・・。」この尾崎紅葉が描く「鬼桃太郎」は、現代版スピール・バーグ監督の「未知との遭遇」の映画を思わせます。「熱海の海岸散歩する寛一お宮の物語」で、別れを告げるお宮を足蹴にする寛一を描いた尾崎紅葉とは想像もつかない展開・・・。桃太郎にチャレンジする青鬼を育てた老夫婦の執念に納得させられました。異次元の少子高齢化を迎えた我が日本。この尾崎紅葉が描く老鬼夫婦に見慣れれば、日本の子育てのあり方にも、光が差すようなきがしました。

◆すてきな絵本との出会い

幼児は、ママのお膝で絵本を読んでもらえる時間が大好きです。この時期は、本のお話よりもママのリズム、ママの温もりを求めるのです。絵本を読み聞かせるときに注意することは、説明しすぎず、教えすぎず、話の筋を大切にして読み聞かせてくださるとよいですね。絵本を選ぶとき、お話も大切ですが、絵がとても大切です。絵本の絵画写真のようにならず、想像する世界が広がりお子さんの心に自分の思いが広がる絵本との出会いがあればたった一冊でも将来への絵本との出会いになるかもしれません。この夏休みすてきな絵本との出会いがあることを願っています。

末筆になりましたがコロナのぐずつきは残るようですが、大事にいたらず無事1学期が終了します。母の会を始め保護者ご家庭の暖かきご理解、ご協力の賜と厚く感謝申し上げます。ありがとうございました。良き夏休みをお過ごしください。